【大賞】◆うたかた さま『アイルランドの孤島から』◆
https://estar.jp/novels/26345677
「まるで一編の映画を観たような心地に/大賞受賞作」
不動産会社に勤めるうたかたさま。結婚を前にしたお盆休みに、職場の尊敬する先輩「村崎さん」とアイルランドに行くことに。
もう、読んでいただければ分かりますが、村崎さんのキャラがとてもいいのです。いや、村崎さんとうたかたさんは二つで一つ? と言いたくなるくらい、しっかりと成り立っている会話や行動。仕事もできる上に、教養もあり、文学にも造詣が深い。こんな人と旅をしたらさぞかし楽しいことでしょう。しかも、フランスではなくアイルランド、ということが大事! はい、読めば分かります。
『星の王子様』を英語で読んでいた村崎さんは、足湯を「発明」したりと何というか、すごいんです。八面六臂? ちょっと違うか。
ともかく、こうしてアイルランドの観光地を巡る話が、単なる観光案内でなく、まるで映画を観ているよう。
ダブリン大学、小さな教会、そして穴場の『モハーの断崖』。
『モハーの断崖』へ向かう電車の中では寝てしまった村崎さんの隣で『ゴドーを待ちながら』を読むうたかたさん。果たしてゴドーは来るのか?
このややドタバタした旅行の過程に細かに挟まれる挿話がまた光っているんです。
ぜひぜひ、ご一読くださいませ。
大賞に輝いた一編です。
ありがとうございました。
◆多田莉都さま『とあるIT業界X年目の三日日記』◆
https://estar.jp/novels/26344756
「執筆の時間をとれない悩みがリアルです。共感する方が多いでしょう」
IT業界で働く多田さま。その実態が生々しくリアルに綴られる一日目。
読者の方も鳴り続く電話の正体が分かると思わず「あーっ」と叫びたくなります。子育て中の方もそうですが、在宅でのお仕事でも、せっかくのいいアイディアを書こう! と思った瞬間に邪魔される。想像するだけでストレスフル。
でもへこたれない多田さま。二日目は「土曜出社ループ」を実感しつつ、スマホのメモアプリでネタにしようとします。さらにカフェでくつろぎつつ、一気に仕上げ! こういうふうに、仕事の合間を縫って執筆している方は多いですよね、共感必至です。
それにしても、仕事にがんじがらめにされる日々、どうにかならないのかと気をもんでしまう……。
悩みながらも執筆を諦めない姿勢、同時に悩ましい日々。
丁寧な筆致で書かれていました。
こんな悩みも皆で話し合えたらいいですよね。
ありがとうございました!
【準大賞】◆藍沢 紗智子さま『氷柱探索記』◆
https://estar.jp/novels/26337745
「読者とともに楽しむ氷柱!」
実は私も埼玉県秩父の氷柱については以前から存じていました。行きたいなーとか思いつつ、シーズンになると寒いだろうと思っていまだ行っておりません。
さて、前置きはさておき、このたび準大賞に選出させていただいたこの作品。とにかく面白いのです。単なる観光案内ではなくて、「物書きさん」である藍沢さまの脳内妄想が炸裂していて、読者はわくわくどきどきしながら一緒に氷柱を訪ねていく気分にさせられます。
そして、そこに貫かれているのは
「アスリートが食べるものに気を使うように、
物書きであれば体験するものに気を使いたい。
by 藍沢 紗智子」
の冒頭の句。
それをまさに実践してみせてくださっているのが本作です。
話しかけるような砕けた文章も気持ちよく、さあさあ、かかってこい、氷柱! 書いてやる! とでもいうような意気込みが素晴らしかったです。
楽しい作品ですので、ぜひお読みくださいませ。
ありがとうございました!
◆蜜原實さま『フラクタル・ガーデン』◆
https://estar.jp/novels/26372977
「思想系才女の数年越しの『ある日』」
一日目。2006年のコミティア参戦記録。ジャック・デリダを読みながら「ゆりかもめ」に揺られていくのが様になる。創作に関する蜜原さまの思想がちらりと、いやしっかりと伺えます。
二日目。翌年、神保町の老舗喫茶店「ミロンガ」で親友のNちゃんと。いやいや、三島由紀夫、武田泰淳までならまだしも埴谷雄高氏のお名前まですらっと出てくる才女ぶりです(「才女」って言い方は良くないかな?)。アルゼンチン・タンゴが流れる喫茶店。私も行ってみたかったです。数ある関心の中から文学を見いだすシーン、いいですね。次々と出てくる固有名詞にも普通名詞にもついていけない私ですが、いい意味で羨望の眼差しを向けちゃいます。
三日目。限りなく現在。
Nちゃんとの交流がずっと続いていることにも感動。そして、私も愛する「エブリスタ」との出会い。蜜原さまを苛むものが気がかりではありますけれど、きっと創作において昇華させていかれるでしょう。
こちらは本当に感想ばかりとなりました。
余談ですが、蜜原さまの短歌もよいです。
ありがとうございました!
【佳作】◆春野わかさま『傷つけたのは君だった』◆
https://estar.jp/novels/26367253
「おしゃれな文章の恋愛体験、でも傷つけたのは……?」
選考結果でも「上手すぎde賞」を差し上げたいと書きました。
いやほんと、上手すぎです。
私、浜崎あゆみさんはあまり聴いてなかったんですが、YouTubeで確認。『appears』がキイなんですね。
いや、時代の空気感たっぷりです。同時代を知っている人にはたまらない。
さて、前置きはさておき、何といっても文章がおしゃれ。まるで往時のドラマを観ているような感覚を意図的に出されてますよね。具体的な「場所」の描写は「酔いしょ」(居酒屋かな?)位なのに(しかも会話のみ)都会的な雰囲気をめいっぱい出している恋愛のお話。
詳しい内容はこれから読む方のために伏せますが、最後のページの「この切り裂かれる痛みは無数の毛穴に埋め込まれて汗と混じって薄まって、いつか忘れた頃に私の創作の一部として滲みだすんだろうか。」の一文にぐっときました。
創作者は、そういうところ、ありますよね。理屈でなく、そうあると私は思っています。
そういう意味でも興味深い作品でした。
ありがとうございました!
◆孫一さま『平行線。』◆
https://estar.jp/novels/26361036
「平行線。を見る人は」
大学の文芸部の何気ない会話劇ともいうべき日記。
でも、あれ? 日記というより三人称小説では?
という仕掛けがこの作品には組み込まれています。
それにしても、「ジャンル分け」って、実際難しくないですか?
私事ですが私は悩みます。悩んだ結果、大概が「ヒューマンドラマ」に。
大学の文芸部……まだ社会に出ていない緩さとか、会話でじゃれるような感覚。橋掛さんと村本さんは実はけっこう仲の良い友人なんですよね?
さてさて、部長さん、ネタばっかり探していてはいけません。
自分でも行動しなきゃ!
でもね、書くことが好きな人たちとのまったりした時間も貴重なんですよね。
そんな気分になりました。
ありがとうございました!
◆孫一さま『平行線。』◆
https://estar.jp/novels/26361036
「平行線。を見る人は」
大学の文芸部の何気ない会話劇ともいうべき日記。
でも、あれ? 日記というより三人称小説では?
という仕掛けがこの作品には組み込まれています。
それにしても、「ジャンル分け」って、実際難しくないですか?
私事ですが私は悩みます。悩んだ結果、大概が「ヒューマンドラマ」に。
大学の文芸部……まだ社会に出ていない緩さとか、会話でじゃれるような感覚。橋掛さんと村本さんは実はけっこう仲の良い友人なんですよね?
さてさて、部長さん、ネタばっかり探していてはいけません。
自分でも行動しなきゃ!
でもね、書くことが好きな人たちとのまったりした時間も貴重なんですよね。
そんな気分になりました。
ありがとうございました!