文フリの本①:『青音色』第3号、拝読しました。

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文フリ東京41で購入した本の感想を書かせていただく記事です。
まずは、『青音色』第3号「特集 言わないでおいたこと」です。

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『青音色』第3号

●巻頭詩「姉が教えてくれたこと」坂本瞳子さん作

ファンタジーのようでいて、いろいろに解釈できる詩ですね。
語り手の妹は、姉を嫌っていたのではないかと感じます。
もしかしたら、彼女の「夢」だったのかも、などといろいろ思いを巡らせました。

●「先生に夏休みなんてない」潮田クロさん作

現役の中学校の先生なのでしょうか。今の学校や親と子のリアルがつまっている感じがしました。ライトなタッチながら、考えさせられる作品です。
あるベテラン教師の、鋭い一言が良かったです。

●「赤いワンピースの少女」ホシガラスさん作

戦中戦後を生き抜いた女性の記録。それは平凡かもしれないが、まさしく一生懸命に生きた記録。そういう体裁の小説です。戦後の状況がとても生々しく描かれていたことが印象的でした。戦後八十年にふさわしい作品だと思います。

●「職場を去るとき」蒔岡るねさん作(短歌)

職場への思いが滲み出る十首の短歌。少し前の出産を機に退職された体験を歌った作品のようだが、職場というのは、なぜこんなにいずこも変わらないのだろうという気持ちになった。

●「月の汀で」朝野にわさん作

不思議な味わいのお話でした。海と母。タイトルの回収も上手いです。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、丁寧で工夫された比喩や描写も良かったです。

●「茶山と織田作」蒔田涼さん作

進学で上京した息子の元を訪れ、そのまま息子が出店するという文フリに参加した主人公は、そこで学生時代につき合った「無頼派」、織田作好きな男と再会する。
必ずしも輝いてはいなかった学生時代の息詰まるような記憶が生々しい。
またこの作品の姉妹編は、「ミモザとビオラ」から出版するアンソロジー『ユーモアの手品箱』に掲載されます。お楽しみに!

●「いまをゆらゆらいきる」相沢朋美さん作

「ベル」が家の女の子、鈴ちゃんの成長を見守るお話。ほっこりすしました。家族の一員として鈴ちゃんの喜びを感じてくれる子。癒されますね。

●「星を持つ人」林白果さん作

性別の違う「もうひとりのきょうだい」。もうひとりの自分。成長とともに、まるで痣のように消えていく感覚。幼少期からの成長過程での夢のような感覚。不思議と共感します。

●「フェアリーテイル」福島太郎さん作

福島県のある町の「妖精美術館」を巡って語られるエピソード。最後に但し書きがなかったら、ノンフィクションかと思ってしまうくらい、リアルでした。

●「隣の犬は良く吠える犬だ」吉穂みらいさん作

ライトなタッチのオカルト系。楽しく読めました。出てくるキャラクターが魅力的です。

●「ネビュラ・イレパラビリス」月瀬由乃さん作

SF作品。世界観がしっかりしていて、かつ人物の絡みや心理描写も丁寧で、面白かったです。個人では超えようがないものもある。そんな切なさを感じました。

◆なお、『青音色』第3号はBOOTHでは売り切れだそうです。
 1月18日の文学フリマ京都にて若干数販売予定。